2011-01-01から1年間の記事一覧

落語進化論 立川志らく

魅力ある落語とは何か、真摯に熱く語られながらも、内容はめっぽう面白い。 ・落語は非常識を肯定する ・落語は即ち人間の業の肯定である ・落語はイリュージョンである とは立川談志の定義だが、それを極めようとする志らくが、 ・名人の落語には江戸の風が…

いねむり先生 伊集院静

突然気を失うように眠ってしまうナルコレプシーという持病をもつ「先生」色川武大(阿佐田哲也)との交流を描く。妻を病で無くし傷心のサブローは、先生と出逢い、癒されていく。「チャーミング」と形容される先生の魅力、包容力、不可思議さ、孤独、寂しさ…

千駄ヶ谷市場 先崎学

対局日誌がよみがえった!当然のことながら、河口俊彦七段とは異なるテイストの観戦記となっており、将棋のプロ棋士の戦いのすごさ、読みの深さに触れられる内容となっている。現在、この人以外にこのようにプロ棋士のことを生き生きと描ける人はいないだろ…

縦横無尽の文章レッスン 村田喜代子

下関にある海の見える大学で行われた文章講座の内容をまとめたもの。 名文を読み、その文章のどこがすばらしいのか、筆者が名文で解説している。 小学生の作文から哲学者、科学者の文章まで、幅広く題材はとりあげられ、心が柔らかくなり文章を書いてみよう…

早雲の軍配者 他戦国時代小説

いま、戦国時代小説が新しい。富樫倫太郎「早雲の軍配者」は、足利学校で学んだ3名の学友が北条早雲、武田晴信、上杉景虎の軍配者となって活躍する三部作の第一作だ。早雲の軍配者作者: 富樫倫太郎出版社/メーカー: 中央公論新社発売日: 2010/02メディア: 単…

BORN TO RUN 走るために生まれた クリストファー・マクドゥー

本書の内容は、訳者あとがきで、適切に説明されている。つまり、本書は、次の3つの物語が融合している。 先ず、故障がちなランナーだった著者が、メキシコ銅峡谷にいるという白馬(カバーヨ・ブランコ)と呼ばれる謎の人物を探し、史上最強の走る民族「タラ…

ロボット創造学入門 広瀬茂男

地雷撤去ロボットの開発から始まり、4足歩行ロボットTITAN、ヘビ型ロボット、安定して柔らかく把握のできるグリッパなど、興味深い話が続く。 特に、考えこんでしまったのは、アシモフのロボット三原則に言及したところだ。人間へ危害を加えてはならないな…

島津奔る 池宮彰一郎

記録的な勝利を収めた朝鮮の役の退却戦から話は始まる。「シーマンズ」として彼の地で恐れられた薩摩島津の関ヶ原の物語だ。 島津義弘を英雄として描いている。「奔る(はしる)」とは、島津義弘を助けるため、国元から家臣が一人また一人と上方に向かって奔…

 走ることについて語るときに僕の語ること 村上春樹

村上春樹がストイックに体を鍛えているという話は聞いていたが、ここまで本格的なランナーだとは知らなかった。毎年フルマラソンを完走し、100キロマラソンにも参加し、トライアスロンも挑戦している。 これは、エッセイではなく、メモワールだと本人が述べ…

ぼくんち 西原理恵子

「鳥頭対談」でゲラゲラ笑い、続いて「この世でいちばん大事な「カネ」の話」を読み、西原母子の関係や旦那とのその後を知った。鳥頭対談で面白おかしく語られただけではないことが分かり、そして、この「ぼくんち」を読んだ。とても読者に受け入れられない…

受け月 伊集院静

登場人物はなんらかのかたちで、野球との関わりがあり、その思い出も含めて人生の断片が切り取られている短編集。 さすがというしかないうまさだ。作品ごとに強い余韻が残る。受け月 (講談社文庫)作者: 伊集院静出版社/メーカー: 講談社発売日: 2007/03/15メ…

全思考 北野武

「大学をやめようと思ったとき、新宿の空は後にも先にも見たことがないくらい真っ青に晴れ渡っていた」 「東京の芸能界でビートたけしをひとり作るために、何万人が死んだと思ってんだ」 「作法というのは、突きつめて考えれば、他人への気遣いだ」 「人類の…

ふがいない僕は空を見た 窪美澄

コスプレセックス、出産など刺激的なシーンが出てくるが、登場人物たちは皆驚くほど純粋で生きることにひたむきだ。 久しぶりに面白い小説に出会った。ふがいない僕は空を見た作者: 窪美澄出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2010/07メディア: 単行本購入: 13人…

抱影 北方謙三

どうしても、社会との折り合いがつかない。自らの中にある思いに突き動かされ、滅びに向かって進んでいく。そんな男の物語を、北方謙三は描き続けている。 最初に読んだのは、「檻」で、最近読んだ「煤煙」もその系統に属する。 今回は、主人公は画家であり…

美女と野球 リリー・フランキー

トイレに入って落書帳に記入。大のツマミをまわして出ようとすると逆流。 水位がどんどん上がってくる。落書帳をひきよせ「P.S.大変なことになりました」 こんなことしとる場合か!!さてどうする!?の箇所で、吹きだしてしまった。「女子が三人とも十七…

冬の眠り 北方謙三

傷害致死で3年間服役した画家仲木は、知人から提供された山小屋で冬を過ごそうとしていた。 北方には、芸術家の孤独と狂気を描いた作品群があり、この作品はその最初のものらしい。 朝起きて山中を走り、暖炉で薪を燃やし、酒を飲み、深い底へ沈んでいく手前…

どうして羽生さんだけが、そんなに強いんですか? 梅田望夫

羽生善治名人の対局のリアルタイム・ウェッブ観戦記とエッセイ対話編で構成される。 久しぶりに読み応えのある将棋のプロ棋士の本だった。 木村一基八段は、攻めを急がせる局面に誘導して無理攻めをさせて、その局面を凌いで受けきっていくという羽生のコメ…

身体感覚を取り戻す 斎藤孝

腰ハラ文化の再生と副題にある。かつて、明治から終戦直後あたりまで、自然体で立つ、歩く、座るという技を人々は普通に持っていた。肛門をきゅっと締める感覚、臍下丹田あたりで、帯をぎゅっと締める感覚をもち、、今とは比べられないくらい長距離を普通に…