冬の眠り 北方謙三

傷害致死で3年間服役した画家仲木は、知人から提供された山小屋で冬を過ごそうとしていた。
北方には、芸術家の孤独と狂気を描いた作品群があり、この作品はその最初のものらしい。
朝起きて山中を走り、暖炉で薪を燃やし、酒を飲み、深い底へ沈んでいく手前で引き返し、眠りにつく。
その中で、ナイフを研ぎ、木を削り、作品がいくつか創りだされていく。
絵を描くために来たという女子大生暁子と出逢い、仲木の分身だと言う青年大下があらわれ、滅びの予感を孕みながら物語は展開していく。
創作するとは何なのか、自分を描くとはどういうことなのか、画家の内省が硬質で濃密な文体で描写されていく。
引き込まれ一気に読了してしまった。

冬の眠り (文春文庫)

冬の眠り (文春文庫)

同じ作品群に属するものとして、天才面打ち師が主人公の「白日」もおすすめだ。

白日 (小学館文庫)

白日 (小学館文庫)