「談志が死んだ」 立川談四楼

立川流創設の引き金となった高弟、立川談四楼が談志逝去にあたっての談志への思いを綴った。
「赤めだか」の談春や「雨ン中の、らくだ」の志らくとは違う思いが伝わってくる。40年もたつと弟子でなく親子になっちまうと言い、
「このオヤジ、総領を始めとするセガレたちの不甲斐なさに腹を立ててる。セガレたちも面目ねえと思ってるんだよ。だから黙ってりゃいいのにこのオヤジ、弁が立つし親子だから遠慮がねえ、ガガッとくるよ。セガレだってヘイヘイ精進いたしますなんて言わねえ。んなことはわかってらあってなもんさ。親子ってそういうもんだろ。」
談志の思い出が心に迫る。

談志が死んだ (新潮文庫)

談志が死んだ (新潮文庫)

銀河英雄伝説 田中芳樹

スペースオペラに属する小説だが、例えば、北方謙三の「三国志」を面白く読んだ人は、絶対堪能できる。
二人の軍事的天才の物語といえるが、ラインハルトは曹操ヤン・ウェンリー劉備諸葛亮を合わせたキャラクターに近い。現在4巻目を読んでいるが、ここまでの面白さは保証する。作者の世界史に関する非常に深い造詣がうかがわれ、警句やしゃれた台詞回しが随所にでてくるのもうれしい。

銀河英雄伝説 1 黎明編 (創元SF文庫)

銀河英雄伝説 1 黎明編 (創元SF文庫)

牛への道 宮沢章夫

脱力エッセイとあり、電車の中で吹き出してしまうので注意とあったが、それほどの過激な笑いではなく、思わずにやりとしてしまうという面白エッセイだ。
冗談なのか、真剣なのかわからない調子の文章がめっぽう面白い。
禅の悟りへの道を牛を題材にあらわした「十牛図」というのがあるが、やはり、それを連想させる。犬をみる日々の話から始まるが、牛への道とは・・・考えすぎだろうか。

牛への道 (新潮文庫)

牛への道 (新潮文庫)

ざこBar 桂ざこば

米朝一門を支える桂ざこばの芸能50周年を記念して出版された自伝。
ざこばの落語は、決して流暢でない語り口から、その落語世界に引き込まれていくのだが、前段の語りがまた絶品だ。
そっちの方が面白いと言われて本人は腐ったりしているが、この本も、まるで、ざこばがそこにいて、語っているように面白い。

ざこBar 酒とテレビと落語と○○

ざこBar 酒とテレビと落語と○○

関連して、嶽本野ばらが、米朝落語について語った「米朝快談」も面白く読んだ。
寝る前に、米朝落語を聞く人が、他にもいたのかとうれしくなった。

米朝快談

米朝快談

考えの整頓 佐藤雅彦

しなやかな知性が感知した不可解について、考えを整頓して文章にした、ということでしょうか。
27編すべてが面白い。ユニークな視点に感心させられるだけでなく、静謐なおだやかな気持ちにさせられる文章だ。また、さすが映像作家だけあって、図や写真の使い方が絶妙だ。

考えの整頓

考えの整頓

無私の日本人 磯田道史

無私であり、利他の精神で、ひたむきに生きた3人の日本人の傑作評伝。
穀田屋十三郎
中根東里
太田垣蓮月
みな、名利を求めず、無名で生涯を終えたが、接した人々の心に深く残った。
著者の表現を借りると「濁ったものを清らかなものに浄化する力」をもった人たち。
その達意の文章は、司馬遼太郎がよみがえったのかと思った。
また、穀田屋たちの必死の働きかけに対する仙台藩の対応は(似たような経験をしたことがあるが)
現在の役人の対応とまったく同じなのに驚いた。江戸時代から綿々と続いた伝統だったのか。

無私の日本人

無私の日本人

タブーの正体! 川端幹人

元「噂の真相」副編集長によるメディアタブーの解説本。
皇室、宗教、同和、政治家、検察、警察、財務省、大手広告主関連(ユダヤ、一部大企業、電力会社、電通)、芸能プロダクションに対して、メディアが触れない実態が、非常に明確に述べられている。
なんとなくそうなんだろうなと思ってきたメディアタブーが、クリアにわかる本だ。現状の正確な把握のためには、このようなメディアの限界をわかったうえで、報道される情報をうけとめていく必要があるが、そのための必読本ではなかろうか。
原発報道についても、皆、このような状況をうすうすわかっているから、新聞テレビの報道は信用されなかったわけだ。
では、どうするかという課題については、ネット情報も含めて、信頼できるメディアを、ケースバイケースで見極めていくしかないのだろうなあ。えらそうにテレビで解説している人物も、どのような組織に属してどのような立場にいる者なのかをよくみて、判断する必要があるということか。