少年譜 伊集院静

少年小説なのであるが、少年の頃の記憶を描いた短編小説集ともいえるのではないか。
最初の「少年譜笛の音」最後の「親方と神様」はともに、最後、一気に少年が老年を迎えた場面にとんで物語は終わる。
人生で大切なことを学んだ記憶、悲しさ、せつなさを深く心に刻み
それとともに鮮明に記憶に残った美しい自然。初夏の木々、蛍、車窓からみる海などの風景が鮮やかに描かれる。
物語に引き込まれ、読み終わり、深い余韻を感じつつ、しばしため息がもれてしまう。
すべての短編がそうなので、一作よんで、しばらく間をおいて次を読むということに
なってしまう。
「トンネル」を賞賛する書評が多いが、個人的には、「古備前」がもっとも好きだ。

少年譜

少年譜