大山康晴の晩節 河口俊彦

不世出の将棋名人、大山康晴を描いた傑作評伝。
傍らで、同じ棋士として見つめた河口俊彦でなければ書けない作品だ。
名人在位18期、憎らしいくらい負けない大名人だったが、
そのすごさは、むしろ、名人を失冠した後の50代以降にある。
将棋のプロの世界で、50歳を過ぎてなお、第一線で勝ち星をあげ続けるのは
並大抵のことではない。
そして、ガンが見つかり、手術の後、六十三歳で名人挑戦者となり、
六十九歳、肝臓にガン転移がみつかる。
再手術ののち、順位戦を戦いつづけ、ついに六勝三敗で挑戦者決定戦に進む。
その執念の戦いに多くの人は感動し、順位戦最終局をみて、先崎四段(当時)は
「こういう人をもてたのは僕らの誇りだ!」と叫んだという。
残念ながら、挑戦者決定戦で敗れたあとしばらくして、大山は帰らぬ人となった。
棋譜でその将棋の内容を辿りながら、大山の人生を追う。
もちろん、棋譜は読めなくても、十分にこの偉大な棋士の姿は迫ってくる。

大山康晴の晩節 (新潮文庫)

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