頭脳勝負 渡辺明

将棋界のビッグタイトル「竜王」を5期連続保持して、昨年永世竜王となった
渡辺明竜王が、2007年多くの人に将棋の面白さを知ってもらいたいと思って
書いた本だ。
もはや、若手という言い方は失礼にあたるだろう。いま、対局している今期
竜王戦では、森内九段を相手に風格すら感じる。
渡辺竜王の言動は、明解で、聞いていて気持ちがよい。それでいて、自戦解説
などをよむと、迷い、悩みが、率直に述べられているのに驚く。
本書には、プロ野球を楽しむように、将棋を楽しむファンを増やしたいとの
抱負が語られている。ブログも開設しており、積極的にファンに情報提供
していこうという姿勢が感じられる。楽しみに読んでいる。
若きトップ棋士が、率直に歯切れよく、将棋について語っている内容は新鮮だ。

頭脳勝負―将棋の世界 (ちくま新書)

頭脳勝負―将棋の世界 (ちくま新書)

人工知能ボナンザとの対局は、テレビで観たが、あわやというところまで
追い詰められたようだ。渡辺竜王自身の解説によると、こう指されていれば
負けでは、という手が、人工知能には指せなかったのが興味深かった。
ボナンザ開発者の保木邦仁氏は、それほど棋力が高くなく、「形勢はどうなんですか」
と聞いている姿が印象的で、なおさら、人格をもったボナンザが対局している
ように感じて、手に汗にぎって見入ってしまった。

渡辺竜王は、最近竜王位獲得から4期連続防衛までの対局を振り返り、自戦記を
永世竜王への軌跡」としてまとめた。
棋譜が多くわかりやすく、対局心理も率直に語られており、こちらも
おすすめの一冊だ。

永世竜王への軌跡

永世竜王への軌跡