純粋なるもの 島朗

現役プロ棋士、島八段が、羽生世代と呼ばれる棋士たちを
描いた作品。
副題に「トップ棋士、その戦いと素顔」とあり、平成8年11月単行本
として刊行され、平成11年1月大幅加筆されて文庫化されている。
羽生、森内、佐藤、森下、郷田、先崎の面々は当時まだ二十代なのだ。
島は六段のときに、まだ奨励会員だった森内、佐藤と研究会をはじめ、
やがて、そこに羽生も加わる。伝説となった「島研」だ。
本書は、そのあたりから始まり、純粋に将棋を極めようとする
彼らの素顔が語られていく。
島は、第1期竜王位を米長との決戦の末、獲得したトップ棋士でもある
のだが、第2期に挑戦者となった羽生との対局の様子も記されている。
(3勝4敗1持将棋という激闘の末、タイトルは羽生に奪取された)
羽生にとって初めてのタイトル戦登場であり、当初は不慣れな状況に
時間配分等ぎこちない面もみられたが、最終局大詰め、見違えるように
目の輝きを取り戻す様をみたあとに、島は記す。
「そして、あの時以来、盤に向かう羽生の自信がなさそうな表情を見る
機会は、もちろんない。」
先輩棋士として、いち早く、彼らの才能を見極め、その精進に敬意を
はらいながら接する島の姿勢が、すばらしい。
純粋なるものには、当然、島も含まれる。

純粋なるもの―トップ棋士、その戦いと素顔 (新潮文庫)

純粋なるもの―トップ棋士、その戦いと素顔 (新潮文庫)