[武道] 武士道エイティーン 誉田哲也
剛の磯山香織、柔の甲本早苗という真反対の、女子高生剣士を描く「武士道シリーズ」の三作目。
快調に物語が進んでいく。
「武士道シックスティーン」「武士道セブンティーン」と年齢を重ね、ついに今回はエイティーンになって、二人とも高校を卒業してしまった。(当たり前か)
磯山香織って、宮本武蔵の五輪書を愛読し、本人はいたって真剣なんだけど、人がよくて妙におかしく、かわいいんだよなあ。
今回は、桐谷玄明先生と福岡南のコーチ吉野先生、後輩田原などのエピソードが挿入されて、ストーリーが重層的に展開されている。桐谷と少年時代の吉野コーチの物語が合わさるところでは、思わずうまいと感嘆してしまった。
桐谷のエピソードでは、剣道の型稽古の意義、古武道と現代スポーツ剣道との違いについて言及されているが深い。凶暴な太刀筋で高校生の吉野少年が打ち込んでくるのを、「一本目」「五本目」と次々に、桐谷玄明が、修行してきた型にそって制する場面では、読んでいて思わずこぶしを握ってしまった。
「……よい攻めだった。だが、ここはいったん引きなさい。負けは死でも、恥でもない」そういう桐谷の言葉に、吉野少年はなおも抗おうとして、落とされる。
しかし、コーチになった今、「……この俺に身をもって教えてくれたあの方に、もう一度お会いしたい。そして願わくば、あなたのお陰で再び剣の道を歩み始め、今に至っていることをお伝えしたい。」と述懐するのだ。
武道に邁進していった女子高生たちのまわりで、武道に打ち込んだ大人たちがいる。そして、あとに続く後輩たちも。
武士道シリーズの物語の幕がいったん引かれた。
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