泣き虫しょったんの軌跡 瀬川晶司

二十六歳の年齢制限のため、奨励会を退会し、一度はプロ棋士への道を断念した瀬川氏は、絶望のふちから、アマとして将棋の楽しさに改めて気づく心境にまで再生をとげる。
アマ名人となり、夢にまでみたプロ棋士との対局が実現し、初戦の中座真四段(当時)には敗れたものの、その後、プロ棋士相手に7割の勝率をあげる。その実績からプロ編入試験が実現し三十五歳のプロ棋士が誕生した。
マスコミに取り上げられたのをみた人も多いのではないか。
かつて(かけ将棋で生計を立てる)将棋の真剣師で「東海の鬼」といわれた花村元司九段が五段でプロ棋士となって以来の快挙だとは知らなかった。
勉強も運動も冴えなかった小学5年生をほめてくれた先生との出逢い、お互い相手が負けることだけを願っていた奇妙なライバル健弥くんとの切磋琢磨。奨励会での挫折、そして再生。
これは、単なる思い出を綴った随筆ではない。
小学生のときの作文も一部載せられているが、この人は、文章の才能がある人だと思った。

泣き虫しょったんの奇跡 サラリーマンから将棋のプロへ

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しかし、中座真(現七段)が、年齢制限ぎりぎりの二十六歳、プロ入りを賭けた最後の三段リーグ最終局に破れ、悄然としていたところ昇段のライバルが全て負けてプロ入りが決まり、呆然として座り込んでしまったという話は読んだことがあったのだが、その同じリーグ戦で、瀬川三段が退会していたとは知らなかった。