武蔵と五輪書 津本楊

宮本武蔵五輪書を、剣道三段、居合道五段の津本楊が現代語訳とともにコメントをしている。
巻末には、全原文(および兵法三十五箇条)も掲載されている。
精神論が多く退屈かなと思っていたが、実戦を経た者のみが語りえる
リアリティにみちていることが、よくわかった。
「武蔵のほかには表現できない、唯一無二の内容が、息をのむほどの力で、
続々と迫ってくる」と津本は書いているが、特に水の巻の記述がすごい。
淡々と構えや太刀さばきを述べているようであるが、
「いずれも大きな技であるが、絶対に敵が逃れられないように追い詰めていく緊迫感が
身に伝わってくる」
「焼刃のにおいがただようなような、切迫した真剣勝負の気配をただよわせる文章である」
という津本楊のコメントをみて、改めて読み返してみると、
長身で大柄な武蔵が、情け容赦なく相手のとどめを刺す様が彷彿と眼前にたち現れてくる。
命のやりとりを経験した者のみがもつ迫力に満ちている。

武蔵と五輪書 (講談社文庫)

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