勇気凛凛ルリの色 浅田次郎

浅田次郎のエッセイは面白い。格調高く下品で、涙と笑いに
満ちている。
内容はバラエティに富み、ギャンブルの話、小説創作に
まつわる苦労、自衛隊時代のエピソードなど、話題に事欠かない。
国家論を論じたかと思えば、排便の話もでてくる(みごとな一本糞という
言葉をこのエッセイで初めて知った。別のところでは、羊羹の一本食いと
いう表現もある)
しかし、このエッセイ集「勇気凛凛(ゆうきりんりん)ルリの色」
シリーズ4部作は、別の意味でも興味深いのだ。
この週刊現代連載のエッセイが始まったとき、浅田次郎は、まだ
無名の作家だった。
それが、「蒼穹の昴」がベストセラーとなり、直木賞候補となり
ながら(大本命といわれながら)落選し、翌年、「鉄道員」で
みごと直木賞を受賞し、「直木賞作家」として1年をすごす。
という4年間のサクセスストーリーとして読めるのだ。
その間、毎週、このエッセイが書き続けられたわけである。
驚くのは、最終4巻目「満天の星」のあとがきに、
この仕事を引き受けたとき、
「この連載エッセイは『無名の物書きが小説家になるまでの
サクセス・レポート』にしよう」
と考えたとあることだ。
結果的に、サクセスの記録となったのではなく、はじめから
成功譚にしてやると意図していたというのだ。
このエッセイ集は、勇気凛凛、自分の夢に突き進んだ男の記録なのである。

勇気凛凛ルリの色 (講談社文庫)

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勇気凛凛ルリの色 四十肩と恋愛 (講談社文庫)

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勇気凛凛ルリの色 福音について (講談社文庫)

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勇気凛凛ルリの色 満天の星 (講談社文庫)

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