夏草冬濤(なつぐさふゆなみ)井上靖
少年小説というジャンルがあるとすると、
これはその最上位にランクされる作品ではなかろうか。
「ああ、いいなあ。この世界」
そういってため息をつきながら最初に読んだのは
中学のときだった。それから時をおいて何度も
読み返しているが、そのたびに幸福な気分に
してくれる。
井上靖の自伝的小説で、有名な「しろばんば」
の続編だ。主人公の洪作が中学3年になったところ
から物語は始まる。
おくてで平凡な少年が、ちょっと不良がかって
魅力的な上級生グループと
交流していくことから、世界が広がっていくのだが、
そのなんともいえないユーモラスでのんびりした
小説世界の雰囲気が、たまらなくいい。
この続編「北の海」もさらにいい。
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