[武道]東天の獅子 天の巻・嘉納流柔術 1〜4巻 夢枕獏
やはり、格闘シーンを描かせると、夢枕獏はすごい。
自身でも世界で一番格闘シーンを描いた作家ではないかと述べていたが、
客観描写、内面の追憶、スロー描写、アングルを変えた描写などと
その技巧は極まっている。
そのうえ、この手の小説は、アクションの動の場面だけでなく、静謐な場面で
その魅力がきまると思うのだが、そのコントラストもすばらしい。
若き加納治五郎と武田惣角が登場し、西郷四郎も加わる講道館四天王、
柔術王国久留米の良移心頭流の中村半助、千葉の揚心流戸塚派の面々、
琉球空手の達人など、多士済々による闘いが、展開されていく。
草創期の柔道は、打ちも蹴りも関節技も、なんでもありの総合格闘技だったのだ。
本当は、前田光世を描こうとして書き始めたということだが、第4巻の終わりに
やっと少年の前田が登場して、物語は終わってしまう。(はやく続きを)
武田惣角は、大東流合気柔術の中興の祖とされ、合気道開祖植芝盛平も一時師事した
といわれている。(惣角の直弟子で有名なのは1998年に95歳で亡くなった佐川幸義で、
この人の強さは多くの武術家が認めている)
武田惣角と西郷四郎は、ともに会津の西郷頼母から大東流「御式内」を伝授されている
とされ、第4巻ではついに本格的に試合うことになる。
とにかくこの小説は面白い。
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